研究概要 |
これまで我々は,感染防御の第一線を担うγδT細胞の増殖活性化に上皮系のサイトカインであるinterleukin15(IL-15)が重要な役割を果たすことを解明した.さらに,Listeria monocytogenes経口感染モデルマウスの腸管上皮間リンパ球(i-IEL)の活性化における上皮糸サイトカインの関与を検討し,感染後早期に腸管上皮(i-EC)からIL-15の産生がみられたのと一致して,i-IELのinterferon-γ(IFN-γ)産生が増加していることを見いだした.これより,IL-15がL.monocytogenes経口感染においてi-IELの活性化に関与する可能性が示唆された.また,平成12年度には,IL-15トランスジェニックマウスを使用し、L.monocytogenes経口感染においてi-IELの活性化におけるIL-15の関与を明確にすべく,種々の実験を行なってきた.この結果,IL-15トランスジェニックマウスでは対照群に比べL.monocytogenes抵抗性が強い傾向が見られた.またi-IELにおいては感染後のIFN-γ遺伝子発現には差が見られなかったものの,transforming growth factor-βの遺伝子発現に差が認められた.今後さらなる検討を加えIL-15の感染防御機構への関わりを解明していく予定である.このように我々は,L.monocytogenes経口感染によるゲノム機能の一過性変化を,マウスを用いて検討してきた.そこで本研究では,ヒトの粘膜感染病巣局所においてこのようなゲノム機能の変化がみられるのかを検索するため,歯周病患者及び臨床的に歯周組織の健康な人の歯肉組織を用い,上皮系サイトカインの関与をPCR法応用の新定量システム等を用い検討を行い,歯周病病態の解明に寄与するとともに,ゲノム機能の一過性変化による生体防御機構の1部を解明していく予定である.現在までに我々は、歯周病患者において歯肉組織中のIL-15は健常者に比べ多く産生されていることを示唆する結果をえている。
|