研究概要 |
調査の概要 23〜85歳の地域住民66名(男性17名,女性49名)を対象に,文部科学省の新体力テストを行った.また65歳以上の健常受診者7名(男3名,女4名,平均年齢73歳)を対象に測定装置(form PWV/ABI)を用いて,SBP(収縮期血圧),DBP(拡張期血圧),ABI, baPWVを測定し,約2ヶ月間の転倒予防運動への参加前後における動脈脈波速度の変化を比較検討した. 結果 体力測定の結果では,高齢者種目とも個人差が大きかったが,測定記録に基づく10段階評価の平均で全体像をみると,男性では,成人の握力を除いて,成人および高齢者とも平均以上の体力を有していた.一方,女性では,成人において,長座体前屈を除いて平均以下の項目が多いものの,高齢者では上体起こしを除く全ての項目が平均より上回っていた.また,高齢者の転倒予防運動への参加前後における動脈脈波速度の変化の比較では,SBP,DBP, baPWVがそれぞれ一定の低下がみられたが,有意差は認めなかった. 討論 1.性別のみで検討した場合,男性では平均以上の体力を有している項目が多いが,女性では一部を除いて平均以下の結果であったが、年齢で分類すると高齢者では上体起こし以外の項目では平均以上の測定結果であった. 2.高齢者は2ヶ月間の転倒予防運動に参加することにより,血圧及び動脈脈波速度の一定の低下が見られたことから、姿勢保持を中心とした低負荷運動は血管の弾性力の回復に有効であり,動脈硬化の予防に役立つことが示唆された. 3.次年度は,さらに対象者を増やし,日常における運動習慣の有無や身体活動量の違いを調査し,それらと体力の関係について検討する必要がある.また,現行の体力測定は,測定日に結果説明ができるシステムが整っていないため,体力測定直後に結果や体力づくりのアドバイスができるシステムの構築が必要であると思われる.
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