研究目的ならびに研究実施計画に従い、満洲ツーリズムに関する一次資料の収集と整理を通して、その実態の一端を明らかにした。従来、日本の観光史上においては、満洲ツーリズムはほとんど記述されてこなかったため、その全体像自体が不明であった。 この点に関しては、各地の大学図書館において閲覧・複写をした『満支旅行年鑑』がたいへん有効な資料であることが明らかとなった。『満支旅行年鑑』は、昭和14(1939)年から同19(1944)年にかけて刊行されており、ここから日露戦争以降における満洲ツーリズムに関するさまざまな出来事を跡付けることが可能である。この最初の成果は、人文地理学会大会の一般研究発表において、「満州観光の軌跡をたどる-『満支旅行年鑑』を糸口として-」(2001(平成13)年11月11日・神戸大学)として口頭発表をおこない、中国論入門書へ「満州観光の軌跡」(阪倉篤秀編著『さまざまな視点からの中国論』晃洋書房、2003(平成15年)として寄稿した。 また、通常、図書館などには所蔵されにくい一枚もののリーフレットや、パンフレット類からは、満洲ツーリズムに関するより具体的な実態が読みとりうるため、こうした一枚資料の収集に取り組んだ。しかしながら、リーフレット・パンフレット類の全体像は明らかにできず、今後の課題として残った。なお、この点に関しては、「満洲観光と歴史遺産」(人文地理学会例会、2002(平成14)年4月20日・関西学院大学)として、口頭発表をおこなった。
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