近年の世界経済のグローバル化や地球レベルの気候変動の影響を受けて、世界の周辺地域に生活する遊牧民の社会は、大きな変貌を余儀なくされた。この研究では、北アジアのトナカイ遊牧民(チュクチ)と北東アフリカのラクダ遊牧民(ソマリ)を事例にして、各々の都市への移住過程とその要因、及び遊牧民の社会変化を明らかにすることを目的とした。 本年度は、テーマに関する文献の渉猟や民族誌映像の分析をとおして、2つの遊牧民がどのようなプロセスをへて、都市に移住しているのかが明らかになった。両者とも、環境変動や国家政策の影響をうけて牧畜経済の自立ができなくなり、都市への移住を余儀なくされている。また、この際に一度にすべての人々が移動するのではなくて、拡大家族のなかで一部の人が移動する段階をへていることが把握された。
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