研究概要 |
本研究の目的は,わが国の中学校数学科における授業の構造とその特徴を,学習者の観点からとらえた授業データの収集と分析を中心とする国際比較を通して解明し,数学科における望ましい指導のための基本的な指針を明らかにするとともに,数学科教員養成のあり方に対する提言を行なうことである。 3年間の研究計画の第2年次にあたる平成14年度は,上記の目的のために,昨年度までに収録された日豪両国の授業データについて,ビデオ映像のデジタル化およびトランスクリプションの翻訳をさらに進め,日豪両国間,およびドイツ・アメリカの授業データとの比較・検討を行った。また,特に,日本の授業における教授・学習過程の特徴を「文化的スクリプト」の構成要素に焦点を当てて分析するとともに,教師と生徒のそれぞれによる授業構造の知覚を比較した。 その結果,TIMSSビデオスタディにおいて示された知見とは異なる日本の授業の展開構造(パターン)が確認されるとともに,「授業における重要な箇所」について,授業者と学習者との間で一致する場合と一致しない場合の両方が確認され,授業の「構造」(分節とその連関)の知覚に違いがあることが明らかになった。 以上の成果について,数学教育の国際比較をテーマに開催された数学教育国際委員会主催の会議(ICMI Comparative Study,平成14年10月,於:香港)におけるシンポジウムに研究代表者が海外共同研究者とともに参加し研究発表を行うとともに,日本数学教育学会数学教育論文発表会および日本科学教育学会年会で発表した。
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