研究概要 |
教師がどのような授業方法を取り入れるかは教師の教職経験と科学についての考え方によるところが大きい。「教師は自身が教えられてきたように教育する」と言われているが、教師になる以前の科学についての経験と科学観、教師として教職経験の中で培われた教育観による。理科教師はこれまでの経験の中で最も近い経験を元に教育方法を取り入れるため科学的知識を注入しようとする傾向が強いと言える。一般的な理科教師は児童生徒に観察・実験させ、その後、科学的な知識を教えれば知識が身に付くという伝統的な科学観に基づく学習指導に終始する。その背景には、理科教師は、物理や化学などの知識や技能などの詳細については理解していても、「科学の本質(Nature of Science)」に対する認識に乏しい。理科の授業方法は、このような教師の持つ科学観に依存するところが多く、理科教師として必要な科学観を持ち得ないことが理科の授業方法を画一なものとしている原因である。 本研究の第二段階として理科教師を対象とする「科学観と理科授業についての考え方」に関する面接調査を行い、教員養成課程の大学生(理科専攻)の結果と比較した。本研究で用いた方法は、McComas, W. F(2000)による教師の科学観調査の方法に、独自に開発した理科授業についての考え方を加味した調査項目を設定した。教員への面接調査は11名と少数であったが貴重な資料を得ることができた。なお、愛知教育大学3-4年生67名を調査対象とした。調査結果から次のことが指摘できる。(1)学生は、経験主義科学観と相対主義科学観を適切に使い分けられていない。(2)教師は、経験主義科学観と相対主義科学観を自分の経験と生徒の実態から把握する傾向がある。(3)相対主義科学観について、学生よりも教師の方がより適切に捉えている。(4)学生、教員とも科学的知識の性格について適切に捉えられていない。理科授業についての考え方は、教師中心の学習指導についてはほとんど否定的であり、児童・生徒中心の学習指導を理想としていることが明らかになった。このことから、理科の教師教育の中で「科学の本質」を認識させる必要があるといえる。
|