本研究はrandomな磁場のあるSchrodinger作用素の性質を多角的に研究することを目的としているが、特に本年は2次元Euclid空間上の定常でergodicな確率場を磁場としてもつPauli Hamiltonianの状態密度関数の挙動に関連する結果を得た。まずこの状態密度関数の0におけるjumpの下限を磁場となっている確率場の1点における平均の絶対値の定数倍の形で与えた。この下限により磁場の1点における平均が0でないとき状態密度関数は0においてjumpし、従ってPauli Hamiltonianは0を無限重の固有値としてもつことが分かる。これは1つの値が無限重の固有値になることをまとまったrandomなSchrodinger作用素のclassで示せた数少ない例である。またこの下限は特に確率場が正の下限をもつときにはjumpの大きさに一致することも示した。以上のことはPauli Hamiltonianのもつ超対称性の構造と状態密度関数のLaplace変換のWiener積分表示を利用することによって示した。次に確率場の平均が0の場合について、確率場が座標変数の1つに依らない場合等、基本的な場合に状態密度関数の0の近傍における下限を対数関数を含む式で与えた。この下限は確率場が座標変数の1つに依らないwhite noiseとなっている場合にComtet、Georges、Le Doussalがwhite noiseの各点独立性を用いて形式的な方法で与えた状態密度関数のexact formulaと同じorderをもち、Pauli Hamiltonianの状態密度関数が他のよく研究されているSchrodinger作用素の場合と違って急激に0から立ち上がること、従ってPauli Hamiltonianが0に近いenergyの状態を沢山もつことを示している。本研究ではこのことを確率場に各点独立性が無い状況においてAharonov、Casherの理論を厳密に応用することによって示した。
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