総合的学習のカリキュラム開発に学校現場が主体的に取り組んでいく過程を通して、現場教師の専門性の発達、教師の協働活動の生成、社会に開かれネットワーキングしていく学校教育システムの開発、という三つの課題がどのように実現されるのかを実践的介入の手法を用いて探究した。参与の現場は、大阪府高槻市教育センターにおけるカリキュラム・コーディネーター育成研修講座、大阪府高槻市立庄所小学校、兵庫県川西市立清和台中学校の三つである。カリキュラム・コーディネーター研修の実施では、市内小学校12校から15人の小学校教師が集まり、総合的学習における環境、地域、国際理解の三つをテーマにした単元開発を実習し、その実践を試みた。その過程を通じ、プロジェクト学習のデザイン、教師と子ども・親・地域住民・専門家との協働、学習活動のネットワーキングといった課題に向けて実践的介入を行った。庄所小学校、清和台中学校における実践的研究では、年度を通じて、教師の協働による総合的学習のカリキュラム開発を実験的に試みた。前者では、学校間交流学習(遠隔協働学習)、学校支援人材バンクの活用、親・地域住民・ボランティアとの協働の実践が進展した。後者は、教科担任制の壁を乗り越え、教師の協働による総合的学習の実践開発に着手でき、「地域参観」を通した親・地域住民との協働を試みている。これらの実験的な試みは、いずれも現場固有の現実的諸条件の中で、教師たちが専門家として自らの実践を分析・批評し、そこから問題を発見して探究していく取り組みとして進められた。学校改革の最重要の鍵として、このような教師チームの学び合いの過程があることを、本研究課題では追求してきている。なお、本研究課題は、フィンランド・ヘルシンキ大学教育学科活動理論・発達的ワークリサーチセンターのユーリア・エンゲストローム教授の研究グループとの共同研究として推進している。
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