研究概要 |
結び目理論を基礎とした暗号システムの開発を,共同研究者の中西氏と共に,1年間をかけて行ってきた. その中で,始めに結び目のジョーンズ多項式不変量を利用した公開鍵暗号のシステムを考案した、それは自明な二つのタングルを2個に分解したもののジョーンズ多項式の一つを公開鍵とし、他方を秘密鍵とするものである.一方のタングルからは,もう片方のタングルの形を類推することが困難であることを利用している.この暗合システムについては,計算の効率はよいが,安全性を高めるためには,かなり大きな交点数をもつ結び目を用いなくてはならないので,まだ改良すべき点がある. また,サテライト結び目を利用した暗号システムも考案した.これは,一つの結び目(コンパニオンと呼ぶ)に沿ってソリッドトーラス内の結び目を埋め込んで複雑な結び目を構成する方法であるが,これによって安全性に優れた暗号システムを構築することが可能であることが判明した、これは,一度サテライト化した結び目は,そのコンパニオンとソリッドトーラス内の結び目に分割することが困難であることを用いている.しかし,実際にどの程度の安全性と効率性があるかの評価はまだできていない. また,多項式不変量などの結び目不変量へ情報を落とすことをせず,結び目射影図そのものを用いた暗号システムも考案した.しかしながら効率の良い計算方法がなく,これも完成の域には達していない. 組み紐群を利用した公開鍵暗号システムを,韓国の数学者が発案している.これは計算の効率も良く、安全性の評価も比較的容易である.今後はその研究結果も参考にして,研究を行う予定である.
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