• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

津波電磁場に関する観測的研究

研究課題

研究課題/領域番号 13J01475
研究機関京都大学

研究代表者

南 拓人  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)

キーワード津波 / 東北地方太平洋沖地震 / シミュレーション / 時間領域 / 有限要素法 / ダイナモ / 電磁場
研究概要

報告者は、平成25年度に津波ダイナモ効果の二次元時間領域数値シミュレーションコードを開発し、2011年東北地方太平洋沖地震津波の引き起こした磁場変動の再現に成功した。また、この内容を論文としてまとめ、査読付き国際誌Geophysical Research Letterに投稿し、2013年8月に採択、9月に出版された。この論文には、津波電磁場を世界で初めて時間領域で再現した点、及び、津波電磁場の二次元特性を明らかにした点に大きなインパクトがあった。
京都大学と海洋研究開発機構を含む報告者の研究グループでは、2011年東北地方太平洋沖地震の際、北西太平洋の海底において、津波の伝搬が誘導したと思われる振幅約3nTの鉛直、及び、水平磁場成分の変動データを取得した。観測された津波起源の磁場変動を再現するため、報告者は2011年東北地方太平洋沖地震の震央と北西太平洋における観測点間の海底地形を三角形要素によって表現し、初期海面地形を与えて、津波速度場及び津波電磁場のシミュレーションを実行した。三角形要素は、複雑な海底起伏の表現が可能であるが、メッシュの作成が煩雑化するため、地球電磁気分野においては敬遠される傾向にある。本研究による数値計算は、数少ない三角形要素採用の実践例として大きな意義がある。また、本研究ではMaeda et al. (2011)の断層モデルを参考に初期海面起伏を計算し、二次元シミュレーションを実行した。報告者の津波電磁場シミュレーションは、北西太平洋の海底で3.11津波が伝搬した際の磁場変動を非常によく再現し、観測された振幅約3nTの磁場変動が津波由来であることが明らかとなった。このシミュレーション結果は、同時に、津波第一波が到来する約5分前に観測された約1nTの磁場水平成分の変動が、津波由来であることを明らかにした。報告者は、この水平磁場変動を、"initial rise"と名付け、追加の有限要素法計算によりその性質を調べた。津波到来に先んじて起こる海底水平磁場の変動(initial rise)は、海底下の電気伝導度が大きくなるに従ってその振幅が減少し、発生しない場合もあることが明らかとなった。このlnitial riseは、それが有意な振幅を持つ場合には, 津波早期警戒への応用可能性があり、今後さらに詳細に研究する必要がある。報告者は、併せて、津波電磁場現象の水深に基づいた分類を行い、津波電磁場現象の理解を容易に行うことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

一年目の重大な研究目的であった「二次元コードを用いて津波と電磁場の関係をまとめて論文化する」に関しては成功し、3.11津波による磁場データの再現結果とともに論文として出版した。しかし、「過去の大きな津波地震による電磁場変動を始めとする津波データをリス化し整理する」については、未だ手持ちのデータしか精査できていない状況にあり、今後可能性のある磁場データの所有者に打診する等して、データの収集を行う必要がある。主た、三次元コードの開発に関しては、三次元数値計算メッシュの作成が難しく、やや遅れている状態にある。

今後の研究の推進方策

二次元コードが完成し、二次元津波電磁場シミュレーションによって3.11津波の誘導した電磁場の二次元的な性質については、議論が概ね終了している。今後は、精力的に三次元コードの作成に取り組み、三次元シミュレーションを用いての磁場データの再現、及び、今後巨大津波が想定される地域において誘導される磁場現象の予測が急務である。津波電磁場現象には、津波の早期警戒への応用可能性がある。二年目は、この可能性に対し三次元シミュレーションを用いた検証が必要である。複雑な海底地形、及び、地下電気伝導度構造の三次元性を数値計算の中で考慮するには、三次元シミュレーションの使用が不可欠であり、特に、海水中に誘導された電流がいかなる経路で閉じるかは、海底地形の三次元的形状に大きく影響することが予想される。本研究では、フリーソフトであるGmshを用いて任意の四面体によって海底地形表現を行い、3次元シミュレーションを実現する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Two-dimensional simulations of the tsunami dynamo effect using the finite element method2013

    • 著者名/発表者名
      Takuto Minami, Hiroaki Toh
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letter

      巻: Vol. 40 ページ: 4560-4564

    • DOI

      10.1002/gr1.50823

    • 査読あり
  • [学会発表] Two-dimensional tsunami-dynamo simulations using the finite element method in the time domain2013

    • 著者名/発表者名
      Takuto Minami, Hiroaki Toh
    • 学会等名
      American Geophysical Union Fall Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2013-12-10
  • [学会発表] 津波到来に先んじて観測される海底水平磁場変動について2013

    • 著者名/発表者名
      南 拓人、藤 浩明
    • 学会等名
      地球電磁気・地球惑星圏学会
    • 発表場所
      高知
    • 年月日
      2013-11-03
  • [学会発表] Properties of the tsunami dynamo effect revealed by 2-D simulations using the finite element method2013

    • 著者名/発表者名
      Takuto Minami, Hiroaki Toh
    • 学会等名
      XIIth International Association of Geomagnetism and Aerollomy Scientific Assembly
    • 発表場所
      Merida, Mexico
    • 年月日
      2013-08-30
  • [学会発表] 二次元有限要素法による津波ダイナモ効果のシミュレーション2013

    • 著者名/発表者名
      南 拓人、藤浩明
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      2013-05-22
  • [備考]

    • URL

      http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/papers.html

URL: 

公開日: 2015-07-15  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi