研究課題
本研究の目的は、大規模な言語リソース用いた誤り訂正およびそれを用いた日本語学習支援システムの開発である。本研究で用いる手法で捉えられる学習者の誤りを明らかにし、また実際に日本語学習支援システムを学習者に使用してもらうことで、提案する手法を用いたシステムの学習効果を明らかにする。本研究で行うことは大きく分けて以下の3つであった。(1)係り受け、構文情報を用いた統計的機械翻訳による誤り訂正と誤り訂正ルールの獲得(2)母語による誤り傾向の獲得(3)日本語学習支援システムの開発25年度は主に(1)について研究を進め、(2)に関しても一部実施した。(1)構文情報といった自然言語処理の応用タスクで広く用いられている情報が、作文誤り訂正のためのルール獲得においてどこまで頑健に働き、またそのルールでどのような誤りを訂正できるかを調べた。本研究では、日本語の誤り訂正を対象としているが、まず英語を対象とした誤り訂正を行ない、どれだけ訂正が可能かを確かめた。日本語の作文は、誤り訂正をする際に単語単位に分割する必要があるが、学習者の書いたひらがなを多く含む分だと単語分割に失敗し構文解析に失敗してしまう可能性がある。誤り訂正に構文情報が効くのかどうかを確かめるため、単語分割の必要がない英語作文を対象に実験を行ない、構文情報が誤り訂正に有用であるかを確かめた。(2)母語による誤り傾向を獲得する前に、母語を推定するタスクに取り組んだ。これは、ユーザが自分の母語が何であるかを明示する必要をなくすために用いることができる。また、このタスクは学習者の母語特有の書き方の特徴を用いて母語を当てるため、母語による誤り傾向を抽出する際にも役立てることができる。なお、このタスクも日本語特有の単語分割の問題を考慮しないため英語で行った。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた3つのサブタスクのうち2つ目の途中まで進めたため順調といえる。25年度は日本語対象ではなく英語を対象として行なっているが、言語が違うだけで適用自体は容易なため、概ね順調である。
25年度は英語を対象として誤り訂正を行なった。また、(2)の一部や(3)については実施していない。そのため、今年度は行なうことは以下の通りである。(a)誤り訂正、誤り訂正ルール獲得を日本語対象で行なう(b)母語の誤り傾向の獲得と推定を日本語対象で行なう(c)日本語学習支援システムの開発
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人工知能学会論文誌
巻: Vol.28, No.5 ページ: 420-432
10.1527/tjsai.28.420