研究概要 |
1)鉄(II)アミド錯体に、テトラメチルチオ尿素とかさ高いチオール(TipSH)と硫黄を8:3:12:7の比で反応させることにより、ニトロゲナーゼP-クラスター活性部位構造を再現する[8Fe-7S]骨格をもつ錯体(1)が合成された。この錯体の8鉄原子には4アミド配位子と2チオ尿素配位子が結合(架橋)している。錯体1にフルオロベンゼン中でアレーンチオラート類(Net_4)(SC_6H_4R)(R=p-Me p-tBu, p-Cl, p-Br, o-SiMe_3)を反応させたところ、チオ尿素配位子がアレーンチオラートに置換された一連のジアニオン性[8Fe-7S]クラスター錯体(2)が得られた。これらのクラスターの構造は錯体1に類似しており、ニトロゲナーゼP-クラスター骨格構造にさらに迫る成果と言える。錯体2は1よりも低電位側に二段階の準可逆な1電子酸化還元波を示す。 2)ペンタメチルシクロペンタジエニル基(Cp*)を補助配位子に持つトリスルフィド錯体[Cp*MS_3]^-(M=Mo(3a);M=W(3b))と鉄チオラートあるいはアミド錯体との反応により、新規M/Fe/Sクラスターの合成を行った。例えば、Fe[N(SiMe_3)_2]_2、PhSHおよびS_8を1:2:2:1/8の比で反応させると、不完全キュバン型クラスター[Cp*MFe_2S_4(SPh)_2]^-(M=Mo(4a);M=W(4b))が得られ、当量比をM=Moでは1:3:3:1/8、M=Wの場合には1:3:6:1/8に変えることでキュバン型クラスター[Cp*MFe_3S_4(SPh)_3]^-(M=Mo(5a);M=W(5b))が得られた。錯体4aまたは4bを多核M/Fe/Sクラスター合成の前駆体として用い、Fe/S源として1倍当量の[Fe_4S_4(SH)_4]^<3->反応させたところ、左右非対称のクラスター骨格を有する[Cp^*MFe_5S_9(SPh)]^<3->(M=Mo(6a);M=W(6b))が生成した。Mo/Fe/Sクラスター6aは、あと鉄2原子を加えればニトロゲナーゼFeMo-cofactor骨格を与える興味深い化合物である。
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