造岩鉱物間の反応過程の解読

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14204052
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 北村 雅夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70004489)
• 研究分担者: 三宅 亮 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10324609) ; 下林 典正 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70235688)
• キーワード: 造岩鉱物 / 反応過程 / 相変態 / コンピューターシミュレーション

研究概要

本研究は、統計力学的理論を鉱物の反応仮定に適用できるように発展させ、そのもとに、鉱物間の反応組織の観察を行い、反応組織のもつ情報の解読、特に、解読法の確立を目的とするものである。
本年度に行った研究は、大別する以下の3つである。
(1)反応組織観察:本年度は、初年度であるため、理論と対応できるナノメートルスケールでの研究に適した試料について、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡下で、鉱物相の空間分布や化学組成の空間変動の観察を行った。これらの反応組織のうち、特に、輝石の反応時の相変化やそれに伴う元素移動についてのデータを取得した。また、(2)の理論の構築のために、反応過程への結晶内歪の効果に関する現象論的な記述を行った。
(2)理論の構築:結晶成長時の形の変化や化学組成の変化に関してすでに提唱している新しい理論を基礎として、統計力学的立場から以下の研究を進めた。
(あ)結晶の異方性に伴う化学組成の変動に関する基本的な理論の構築を図った。
(い)反応時の化学組成の変化への熱輸送の効果を検討し、定式化した。
(3)コンピューターシミュレーション:輝石の相変態に関する分子動力学法による計算を行い、結晶対称性の変化なしに生じる1次の相変態を見出した。また、炭酸カルシウム結晶の分子動力学法による研究を行い、相変態機構に関する新しい機構を見出した。

研究成果

• [文献書誌] Abduriyim, A., M.Kitamura: "Growth morphology and change in growth conditions of a spinel -twinned natural diamond"Journal of Crystal Growth. 237-239. 1286-1290 (2002)
• [文献書誌] Matsumoto, N., M.Kitamura: "Effective distribution coefficients and growth rates of a binary dilute solid solution controlled by kink kinetics and vol ume diffusion"Journal of Crystal Growth. 237-239. 51-54 (2002)
• [文献書誌] Miyake, A., Shimobayashi, N., Miura, B., Kitamura, M.: "Molecular dynamics simulations of phase transition between high-temperature and high -pressure clinoenstatite"Physics of Earth and Planetary Interiors. 129・1. 1-11 (2002)
• [文献書誌] Kawano, J, Shimobayashi, N., Kitamura, M., Shinoda, K., Aikawa, N.: "Formation process of calcium carbonate from highly supersaturated solution"Journal of Crystal Growth. 237-239. 419-423 (2002)
• [文献書誌] Tachibana, Y., M.Kitamura, T.Hirajima, N.Nakamura: "Equili bration temperature of the Kobe meteorite"Geochemical Journal. 36. 323-332 (2002)
• [文献書誌] Asada, R., Shimobayashi, N., Kitamura, M.: "Equilibrium form of negative crystals in igneous quar tz"Journal of Mineralogical and Petrological Sciences. 97・2. 59-69 (2002)