研究概要 |
化石燃料燃焼排ガスに含まれる有害物質である多環芳香族炭化水素とニトロ多環芳香族炭化水素の大気中での挙動については,研究分担者早川和一の研究により,日本国内都市部については次第に明らかにされつつある段階である。しかしながらその長距離輸送や大気中での挙動については解明すべき事が多々ある。また,この毒性が高い物質の除去技術については,室温における光触媒を用いる反応が僅かに報告されていただけであり,排ガスから直接除去ないし無害化するシステムに関する研究はない。本研究班は,環日本海域(富山,金沢,ウラジオストク,藩陽)における大気試料を採集し,これらの物質の分析と解析を行った。また,資源量が豊富でその使用が環境に及ぼす影響が小さいと見積もられる非貴金属酸化物である,酸化鉄(III)を反応材料として,排ガスの温廃熱を利用できる300〜700℃においてその除去反応の詳細を検討することとした。その結果,前者については,大気中に存在する多環芳香族炭化水素及びニトロ多環芳香族炭化水素の種類は,燃焼する化石燃料の種類(石油であるか,石炭であるか,大型施設であるか家庭用小型燃焼設備か,等)によって異なること,日本国内よりも中国東北部やロシア沿海州で濃度が高いことを見出した。後者については,酸化鉄(III)が300〜700℃で熱分解に近いと考えられる脱水素反応により無害化が可能であること,不活性ガスであるヘリウム気流中では多環芳香族炭化水素とニトロ多環芳香族炭化水素は炭化して反応材料表面を失活させるが,反応気流中に酸素を導入することによって,材料表面を失活させることなく高い反応性を保持できる事を見出した。
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