ヒマラヤ・中国区系区植物相の起源とその成立過程に関する生物地理学的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14255005
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 大場 秀章 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (20004450)
• 研究分担者: 池田 博 岡山理科大学, 総合情報学部, 講師 (30299177) ; 宮本 太 東京農業大学, 農学部, 助教授 (00241092) ; 黒沢 高秀 福島大学, 教育学部, 助教授 (80292449) ; 勝山 輝男 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (20214356) ; 米倉 浩司 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00302084)
• キーワード: ヒマラヤ / 植物相 / 高山帯 / 種多様性 / 生物地理学 / 高山帯植物相 / 倍数性 / チベット高原

研究概要

2003年6月から7月にネパールムスタン地域において野外調査を実施した。また、6月から8にインド・シッキムで調査を行った。
[自然条件の観察と測定]調査地域の地形、自然環境を観察し、写真撮影を行った。GPSにて緯度・経度・高度を測定し、アスマン温湿度計にて気温・湿度を定時に測った。
[細胞遺伝学及び分子遺伝学用分析資料の採取]ヒマラヤ地域で多様化をとげた属の植物の細胞遺伝学及び分子遺伝学的解析のために、根端または茎頂あるいは花原基を採取し、前処理をした後、固定し、分子遺伝学の解析には、若葉を採取後、乾燥し、持ち帰った。それぞれの資料については分類学上の保証となるvoucher標本を採集した。
現地にて採取した資料を解析した結果、以下のことが判明した。
1)Orinus thoroldii, Artemisia minor, A cambellii, A. wellbyiはネパールにも分布する。
2)時に同種とされることがあるEuphorbia sikkimensisとE. griffithiiは根茎の形態において明らかな差が認められる。
3)これまでネパールから報告のないThismia(タヌキノショクダイ属)植物を発見した。本植物はヒマラヤ地域からの最初の報告であり、特殊化した外花被片をもつことにより、これまでに知られている種とは異なる可能性が注目される。
また、バラ科SpenceriaおよびSibbaldia、トウダイグサ科、イグサ科イグサ属については、これまで得られた分類学的知見を論文にまとめ専門誌に投稿中である。
さらに、これまでの調査成果をふまえ、ヒマラヤ・チベット地域で多様化をとげた属を含むベンケイソウ科、キク科、イグサ科、ホシクサ科、ラン科について、チベット地域での集覧をまとめて、発表した(Akiyama et al.,2003)。

研究成果

• [文献書誌] Ohba, H.: "Taxonomic studies on the Asian species of the genus Kalanchoe (Crassulaceae). Kalanchoe spathulata and its allied species."Journal of Japanese Botany. 78(5). 247-256 (2003)
• [文献書誌] Omori, Y., Ohba, H.: "Embryology of a Himalayan glasshouse plant, Rheum nobile Hook. f. & Thoms. (Polygonaceae)."Journal of Japanese Botany. 78(3). 145-151 (2003)
• [文献書誌] Akiyama, S., Ohba, H., Ikeda, H., Miyamoto, F., Tsukaya, H., S.-K.Wu: "An enumeration of the flowering plants collected in NW Yunnan and E & C Tibet between 1999 and 2001-Crassulaceae, Asteraceae, Juncaceae, Eriocaulaceae, and Orchidaceae."Bulletin of the National Science Museum, Tokyo, Ser.B. 29(3). 109-122 (2003)
• [文献書誌] Fujikawa, K., Ohba, H.: "A cytological study of Saussurea subgenus Eriocoryne (Asteraceae) from the Nepal Himalaya."Journal of Japanese Botany. 78(3). 135-144 (2003)
• [文献書誌] Miyamoto, F., Ohba, H.: "Studies of the Flora of Mustang, Central Nepal 1. The genus Juncus (Juncaceae)."Journal of Japanese Botany. 78(3). 152-157 (2003)
• [文献書誌] Fujikawa, K., Ikeda, H., Murata, K., Kobayashi, T., Nakano, T., Ohba, H., Wu, S.G.: "Chromosome numbers of 15 species of the genus Saussurea DC. (Asteraceae) in the Himalayas and adjacent regions."Journal of Japanese Botany. 79(in press). (2004)
• [文献書誌] Akiyama, S., Ohba, H.: "Esser, K., Luttge, U., Beyschlag, W. & Murata, J. (eds.) Progress in Botany, volume 65. "Systematics of Himalayan Seed Plants""Springer-Verlag. 397-410 (2004)