研究概要 |
本研究の目的は,ドライバーの自己コントロールに焦点をあてた安全教育プログラムを開発することである.イライラ・焦りといった不安定感情を制御するスキル,すなわち自己評価スキルを向上させるための教育訓練を実施し,その有効性を検証することが最終目的となる.本年度は,教育プログラムの基本形を制作するとともに,教育法の理論的検討と基礎データの分析を行った.運転者行動の階層モデルを適用するならば,自己コントロールスキルは最上位のスキルとして位置づけられる.この最上位のスキルが欠落すると,若年者に代表されるようなリスク行動が助長される.仲間への自己顕示に駆られ,あるいは焦燥感を抑制できずに,感情のおもむくままリスク行動が敢行される若年者の実態を考慮するならば,自己コントロールに着目した教育が不可欠であることが分かる.基礎データの分析からも,時間的焦りや自己中心的イライラ感が,最高速度違反等の違反行動と関連していることが繰り返し見出された. 具体的な教育法を構築するにあたっては,自己の行動を客観視する手法が求められる.その一つとしてミラーリング法を採用することで,教育効果が期待できるとの結論に至った.鏡となる客観的資料(たとえば,自己の運転行動を撮影したビデオ映像など)をもとに,受講者自身が主体的に問題点に気づくことが,ミラーリング法の教育方式である.現場での展開研究を目指して,協力関係にある事業所で教育方式に関する事前調査を行った.客観的資料をもとにグループ討議することが有効であること,またディベート方式によるグループ討議が,.他者(自分以外の従業員)の認識内容や対処方法を知るのにょい機会になることが分かり,ミラーリング法が自己評価スキルを向上させるのに効果的であるとの感触を得た.また受講者自身からも,自己評価に重点をおいた講習内容に教育的価値を感じるという報告を得た.
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