研究概要 |
本研究は、地方分権時代における自立型地域社会形成の可能性の方途を探究することを課題とする。われわれは、この課題を遂行するために、全国11自治体の地域住民組織の中枢活動者(地域リーダー)11,439名('04年2月〜3月)、全国37自治体職員5,104名('04年1月〜2月)、大阪府T市議会議員4名('05年3月〜5月)を対象に質問紙調査とヒアリング調査を実施した。本報告書はその成果である。つぎは諸知見の一部である。 1.地域リーダーは、自己充足的な活動が多く、集団「枠」の規定が強いが、地域に自己アイデンティティを形成するリーダーたちの住縁ネットワークは豊富であり、それは近隣の相互支援機能、コミュニティ感情や地域参画への主体要件の醸成、及び地域の機能的ネットワークの強化に機能する。 2.防災に対する自助努力に積極的な地域リーダーは、共助志向性が高く、自主防災活動にも積極的である。彼らはまちの防災課題の認知の仕方も、共助的課題を共助的参加で支える傾向があり、地域リーダーとして地に足の着いた認知が示唆される。 3.家庭・学校・地域社会・行政の連携の1つである地域教育活動を促進するのは、指導力・調整力のあるリーダーの「人的資源」と、「広報活動」「行政の協力」である。 4.自治体の昇進政策には、下位職については昇進分散の縮小による「一律年功型」への移行が,上位職については昇進確率の低下による「トーナメント型」への移行がみられ、これらは職員の組織への愛着を高める効果があり合理的である。 5.自治体職員は、職位の上昇とともに所属する部課に忠誠になり(行政人)、行政幹部になると、公共の利益を追求する役割を担い、己を律する倫理観を発達させる(公共人)。「公共人」を発達させた職員は、自治体の政策官庁への発展を志向する。 6.地方議員の役割意識・行動の創出と変容は、彼らの社会的経歴と関連する。
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