本研究は、現実社会における政府が、素朴な経済理論で想定されるように市場の失敗の補完機能のみを果たすのでなく、同時に、様々の理由で「政府の失敗」をもたらしているとの問題意識に基づいて、社会選択論、投票理論、公共選択論、組織論および比較制度論等を総合、応用的に適用・展開することによって、現在のように大きな政府が存在する経済社会において、種々の政策決定において政府がどのように行動し、その決定・行動が経済社会にどのような影響を及ぼすかを考察し、政策・公共的意思決定のあり方とその基礎にある制度の関係をさらに深く検討・解明し、公共部門・政府機能の効率化を図ろうとする場合、政府組織および制度がどのようであるべきかについて解明することを目的としていた。 これらの目的のため、最終年度である平成16年度は、これまでの研究をさらに展開するとともにそれを纏める形で、次のような調査および研究を行った。第1に、公共選択論を拡張的に一般する考え方として、Dixitの考えに従って、消費者と政府が公的活動についての契約を行うモデルの展開を試みた。第2に、わが国の政府・議会における実際の政策決定が、公共選択論の考えに沿うときどのように捉えられかを、公共選択論がそのような政策決定の特徴・パフォーマンス等にについて指摘する含意と比較しながら、検証を試みた。第3にこれに関連して、このために近年の主要な政策について、政府および議会報告等の政府資料、新聞・雑誌等のマスコミ資料、各研究論文・書籍等によって、その決定過程、政策の執行とその効果およびそれによって生じた問題、政策評価等について、引き続き調査・整理を行った。第4に、通常の理論の展開あるいは整理を図る観点から、政策効果および最適政策等の研究についても行った。これらの結果の幾つかは後述の研究発表に示されている。
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