研究概要 |
1.タイガ域(東シベリア・ヤクーツク)のカラマツ林について引き続きデータの収集,整理を行った.植生2層からなる1次元モデル(2LM)に降雪遮断過程を加え,通年計算を可能にした.モデルによる水収支の解析から,年によっては降水量よりも多くの蒸発散が存在することがあり,凍土の解け水でまかなっている可能性が示唆された.また,蒸発散特性の気象データ依存性,地域性を察しやすくするため,従来からよく使われてしいるJarvis型気孔パラメタリゼーションに対応できるようにした. 2.名古屋近郊(稲武)における,常緑針葉樹のデータを用いて開発してきた植生動態モデルを落葉針葉樹など他の気候帯・植生タイプに適用して長期計算するために,落葉過程や更新過程の導入を検討している.AGCMに組み込んだon-line実験でパラメタ調整した陸面過程モデルMATSIROを用い,off-line実験で積雪を中心とした感度実験を行うために,データ収集やモデルのセットアップを行っている. 3.タイ北部の常緑広葉樹林では乾季の終わりに蒸散がピークになる(Tanaka et al.2003).これは雨季に降り地中深くまで染み込んだ水を乾季後半に樹木が汲み上げて大気に放出していることを意味する.これは土壌水分の利用を制限する土壌の深さと根系の発達と関係していると考えられるが,これまで調べられなかった.この現象を調べるために,土壌-植物-大気を一体化にした水交換モデルを作り,この乾季後半に起こる蒸散のピークを支えるメカニズムについて調べた.
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