研究分担者 |
池内 昌彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20159601)
吾郷 日出夫 理化学研究所, 構造生物物理研究室, 研究員
神谷 信夫 理化学研究所, 研究技術開発室, 室長(副主任研究員待遇) (60152865)
榎並 勲 東京理科大学, 理学部, 教授 (40084305)
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研究概要 |
好熱性ラン藻Thermosynechococcus vulcanusより単離・精製・結晶化した光化学系II複合体について、各種重原子置換誘導体結晶を作成し、SPring-8の放射光を利用し回折データを収集した。これにより位相を決定し、分解能3.7Åでの光化学系II複合体の構造を決定した。構造解析は、光化学系IIの主なサブユニットであるD1,D2,CP47,CP43,33kDa,12kDa,チトクロムc550の配列に基づき、これらサブユニット中の大きい側鎖を持つアミノ酸残基(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスジチン)の一部の電子密度を目印として、これらサブユニットの大部分に対応する領域を決定した。この他、数種の低分子量サブユニットを同定し、構造解析した。得られた光化学系II複合体の構造は、これまで報告された近縁のラン藻Thermosynechococcus elongatusの3.8Å構造より多くの情報を提供した。特に、3種の表在性蛋白の内、12kDa蛋白質の構造を初めて決定し、それが他の2つの表在性蛋白33kDaとチトクロムc550の中間に位置し、それら2つの蛋白質のいずれとも相互作用していることを明らかにした。また、D1,D2,CP47,CP43のルーメン側に突出しているループの多くを同定し、ルーメン側において、これらサブユニット間及び表在性蛋白質との間の多種の相互作用を示した。反応中心及びその近傍のクロロフィルの配置をより詳細に分析し、反応中心に位置する2つのクロロフィル同士の距離がより近いことから、その間の相互作用がアクセサリークロロフィルとの間の相互作用より強いことを示した。D1,D2に近い領域で2つのカロチノイドを見つけ、それらが2次電子伝達や過剰エネルギーの逸散に重要な役割を持つことを示唆した。さらにMnクラスターやその近傍の電子密度を決定し、その可能な配位子についてほぼすべて推定した。
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