研究概要 |
本研究の目的は光化学系II複合体(PSII)の立体構造を解析し、それに基づきPSIIにおける電子伝達反応、水分解・酸素発生反応の機構を解明することである。PSIIは14-17種の膜貫通サブユニットと3種の膜表在性サブユニットを含む分子量350kDaの超分子複合体であり、その結晶化は困難であったが、我々は好熱性ラン色細菌Thermosynechococcus vulcanus由来PSIIの結晶化に成功し、その結晶構造を3.7Å分解能で解析・報告した(Kamiya and Shen,2003,PNAS,100,98-103)。我々はPSIIの大サブユニットCP47,CP43,D1,D2の70-80%アミノ酸残基を一部の大きい側鎖を持つ残基の電子密度から特定し、立体構造においてチェーントレースをした。また、膜表在性サブユニットの一つである12kDaタンパク質の構造を始めて特定し、それにより酸素発生反応に関与している3つの膜表在性サブユニットの構造をすべて同定した。PSII反応中心を構成している四量体クロロフィルのうち、PD_1-PD_2の距離がそれぞれのアクセサリークロロフィルとの距離よりも短く、したがってPD_1-PD_2の間の相互作用が相対的により強いことを示した。反応中心付近において、D2の外側に2つのβ-カロチン分子を見つけ、これによりPSIIにおける2次電子伝達経路はチトクロムb_<559>あるいはChlZD_2→β-カロチン1→β-カロチン2→ChlD_2→PD_2→PD_1であることを明らかにした。水分解を直接触媒している4原子Mnを含むMnクラスターについては、Y字型あるいは3+1モデルと言う従来提唱されたモデルと一致する結果を得た。我々はさらに結晶の分解能を3.5Åに上げ、PSII構造モデルの修正・精密化を行い、PSIIの立体構造からその機能をより詳細に考察した。
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