研究分担者 |
田中 滋康 静岡大学, 理学部, 教授 (90146233)
田吹 亮一 琉球大学, 教育学部, 助教授 (60155231)
神谷 隆宏 金沢大学, 理学部, 助教授 (09554024)
生形 貴男 静岡大学, 理学部, 助教授 (00293598)
鈴木 雄太郎 静岡大学, 理学部, 助手 (50345807)
|
研究概要 |
Platycopidaは,二叉型の第二触角や胴部に明瞭な体節を持つなど原始性を残し,いわば「生きている化石」と目される分類群である.しかしこれまでに報告されているPlatycopidaの分類群は,生息場所が浅海から漸深海であるため生体が得られることが稀で,脱皮齢を通した形態形成については観察されておらず,進化系統を考察するための重要な情報が欠けていた.本研究では,これを飼育して全9齢全てについて背甲および全付属肢の記載を行った.その結果,第1齢(最初期幼体)では,Podocopidaの体制よりも進んだ状態であることが明らかになったが,二叉型付属肢を持つ事によってPlatycopidaの体制が祖先的であるとすれば,現世で最大の種多様性を擁するPodocopidaの体制が,幼形成熟(paedomorphic)的であることが示唆された. またPlatycopidaは,Podocopidaと比較して第七胸肢を欠くことが知られているが,個体発生の中途段階(第6齢および第7齢)ではその原基が観察された.これは,Platycopidaが,Podocopidaと祖先を同一にすることを強く示唆するものである.PlatycopidaとPodocopida内の分類群の系統関係については,すでにDNAの塩基配列の比較を含めて議論されているが,明確な関連性は説明できていない.しかし,初期幼体の第一触角における剛毛式(chaetotaxy)には,Podocopidaの中のDarwinuloideaとTerrestricytheroideaとに完全な一致が見られる.3者は,異なる生態的位置,生活習慣を持っているので,これらは機能的側面よりも遺伝的側面に拠るところが大きいと考えられ,PlatycopidaとPodocopidaの系統関係を考察する上での新知見となった.
|