研究概要 |
近年,グローバルコミュニケーションネットワークを目指した通信衛星が展開されつつあるが,量産・低コストを指向するあまり衛星の故障回数が増加し,衛星の使い捨てが行われ,これらの不要衛星が宇宙のゴミ(Space Debris)となって軌道上を漂い続ける事態が懸念されている.故障・運用終了した衛星には自らを制御する能力はなく,タンブリング運動とよばれる複雑な回転運動をしたまま軌道上を漂流しつづけることとなる.これらを捕獲回収するためには軌道上ロボットの助けが必要である. 本研究は,タンブリング衛星の安全な捕獲を可能とする宇宙ロボットの制御技術を明らかにし,具体的なミッションを行いうる次世代実用型ロボット衛星の概念設計,基本設計をおこなうための指針を得ることを目的とする. 平成14年度においては,基礎理論の展開と数値シミュレーション環境の構築に主眼を置いた研究を実施した.特に基礎理論の展開として,捕獲時の接触現象(コンタクトダイナミクス)の定式化を重点的に考察した.タンブリング衛星を軌道上のロボットアームで捕獲する際,相手衛星を突き飛ばしてしまうことが懸念されるが,ロボットアームをインピーダンス制御し,そこに与えるインピーダンスを調整することにより,相手突き飛ばすこと無く接触を維持できることを明らかにした.安定接触の限界インピーダンスを,インピーダンスマッチングの考え方を利用して定式化した. また,衛星捕獲の数値解析をおこなうため,シミュレーション環境を構築した.数値解析の中核となるグラフィクスワークステーションを購入し,および,グラフィクスのリアルタイム表示の環境を整えた.数値解析には、これまで宇宙多節リンク系のシミュレーション用に開発してきたSpace Dynをベースとし,これに加えて,コンタクトダイナミクスのプログラムを新たに開発した.
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