研究概要 |
近年,グローバルコミュニケーションネットワークを目指した通信衛星が展開されつつあるが,量産・低コストを指向するあまり衛星の故障回数が増加し,衛星の使い捨てが行われ,これらの不要衛星が宇宙のゴミ(Space Debris)となって軌道上を漂い続ける事態が懸念されている.故障・運用終了した衛星には自らを制御する能力はなく,タンブリング運動とよばれる複雑な回転運動をしたまま軌道上を漂流しつづけることとなる.これらを捕獲回収するためには軌道上ロボットの助けが必要である. 本研究は,タンブリング衛星の安全な捕獲を可能とする宇宙ロボットの制御技術を明らかにし,具体的なミッションを行いうる次世代実用型ロボット衛星の概念設計,基本設計をおこなうための指針を得ることを目的とする. 平成15年度においては,前年度までに導出したインピーダンスマッチングの考え方に基づく安定接触に関する理論を発展させ,ターゲット衛星の質量および慣性モーメントが与えられた場合に,捕獲用ロボットアームの先端に与えるべき目標インピーダンスを求める方法を明らかにした.この目標インピーダンスを,ターゲットのインピーダンスより小さな値に設定することによって,相手衛星を突き飛ばすことなく,安定接触が保たれる. さらに,上記の特性を確認するための確認実験も行った.宇宙航空研究開発機構・筑波宇宙センターに設置されている2台の産業用ロボットアーム(PA-10)を借用し,片方にプローブを取り付けてチェイサ(捕獲ロボット)とし,他方をターゲット(被捕獲衛星)と見立て,接触力に対するそれぞれの物理モデルに基づく運動を模擬した.実験の結果,インピーダンスマッチングモデルに基づく接触安定条件が妥当なものであることが確認できた.しかし,マッチング時の特性周波数が,実験と理論では一致しなかった.ロボットの応答遅れがその原因であると考えられるので,次年度は,応答遅れとインピーダンスマッチング特性の変化についてさらに追求する予定である.
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