研究概要 |
近年,グローバルコミュニケーションネットワークを目指した通信衛星が展開されつつあるが,量産・低コストを指向するあまり衛星の故障回数が増加し,衛星の使い捨てが行われ,これらの不要衛星が宇宙のゴミ(Space Debris)となって軌道上を漂い続ける事態が懸念されている.故障・運用終了した衛星には自らを制御する能力はなく,タンブリング運動とよばれる複雑な回転運動をしたまま軌道上を漂流しつづけることとなる.これらを捕獲回収するためには軌道上ロボットの助けが必要である. 本研究では,タンブリング衛星の安全な捕獲を可能とする宇宙ロボットの制御技術を明らかにし,具体的なミッションを行いうる次世代実用型ロボット衛星の概念設計,基本設計をおこなうための指針を得ることを目的とする. 平成17年度においては,衛星を把持する瞬間に対象の把持飛ばしを防ぎ,安全に衛星捕獲に伴うための効果的な力制御法を明らかにした.また,ロボットアームの運動量を適切にコントロールすることにより,衛星捕獲後に捕獲衛星および捕獲対象の姿勢の乱れを最小限にとどめる制御法を明らかにした.さらに,これらの制御及び,前年度までに確立されていた制御法を統合・総括して,一連の衛星捕獲シーケンスを確立し,数値シミュレーションによりその妥当性を確認した. また,捕獲対象となる衛星モデルを精密石定盤の上において空気浮上させ,宇宙空間に浮遊している状態を模擬した.本実験装置を用いて,ロボットアームが浮遊ターゲットに触れる瞬間の接触現象(コンタクトダイナミクス)に関する力学データを収集することにより,これまで構築してきた数学モデルが妥当であることを検証するとともに,モデルに用いる物理パラメータの同定法についても確立した.
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