研究課題/領域番号 |
14350335
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研究機関 | 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所 |
研究代表者 |
朽津 信明 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター, 主任研究官 (50234456)
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研究分担者 |
北野 信彦 くらしき作陽大学, 食文化学部, 助教授 (90167370)
窪寺 茂 奈良文化財研究所, 文化遺産部・建造物研究室, 室長 (00393372)
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キーワード | 塗装 / 顔料 / 彩色 / 瓦 / 分光光度計 / 反射スペクトル / ベンガラ / 非破壊分析 |
研究概要 |
前年度までは、主として中世・近世の建造物塗装に関して、その変遷を明らかにしてきていたが、今年度は古代の建造物塗装について検討を試みた。現存する古代の建造物が、築造当初の塗装を留めている事例は皆無に等しいが、出土品などの分析から、当時の状況を推定することは不可能ではない。特に出土した軒平瓦で、板と接していた考えられる箇所には、その板を塗装するときに付着してしまった赤色顔料が残存していることがある。この顔料はまさに建造物塗装の顔料と判断されるため、全国各地の遺跡から出土した、そうした軒平瓦に付着する顔料を系統的に調査した。その結果、今回、北は白河市の借宿廃寺から南は宇佐市の虚空蔵寺・法鏡寺まで、東北、関東、近畿、中国、四国、九州で調査した限りの白鳳または奈良時代とされる瓦に付着していた顔料は、例外なくベンガラであった。既に前年度までに明らかにしていたように、建造物塗層における赤色顔料としては、大きく分けてベンガラ、朱、鉛丹の三種類があり、さらにベンガラの中には、純粋で色鮮やかなタイプの「狭義のベンガラ」と、不純物が多くどちらかと言えば茶色に近い落ち着いた色の「丹土」とがある。しかし、奈良時代以前で調べた範囲では、これまでのところいずれも丹土と思われる事例しかない点が注目される。これは、塗装の概念の変遷を考える上で、極めて重要な情報であり、このような視点から、さらに次年度も検討を進めていく予定である。
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