現在利用されている大規模な天然ガス田は、平均的に10%前後のCO_2を随伴し、一方、さらに多くのCO_2を含む低品位天然ガスは、膨大な埋蔵量を持つにもかかわらず、大部分が未利用の状態にある。そこで、本研究では、随伴CO_2、を分離せずに酸化剤として用いて、天然ガスの主成分であるCH_4、を直接変換し、石油化学の主原料であるC_2H_4・C_2H_6を高収率で合成できる触媒の開発を目指している。 本年度は、アルカリ土類金属-マンガン複合酸化物を使用し、高表面積を可能にする調製法で作成した酸化物触媒の性能を検討した。Mn酸化物粉末をアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba)塩の水溶液に含浸したのち、特殊な処理を施した複合酸化物触媒を調製し、石英製固定床流通式反応管を用いて、CO_2を含む天然ガスをシミュレートしたガスを反応させ、生成物(C_2H_4、C_2H_6、CO)をマイクロGCでオンライン分析した。その結果、Sr-Mn触媒はCa-Mn触媒より高いC_2炭化水素(C_2H_4、C_2H_6)選択性を示した。C_2選択率はSr/Mn原子比に依存しほぼ1で最大値(80%)を与えた。供給ガス中のCO_2濃度とC_2選択率の関係を調べたところ、Sr-Mn触媒は、Ca-Mn触媒とは対照的に、ほとんど濃度依存性を示さないことが明らかとなった。このような違いを調べるために、Transient Kinetics法を用いて、反応直後の触媒表面を解析した結果、Sr-Mn触媒では、SrMnO_<2.5>が反応過程で生成し、この中間体がCH_4を活性化していることが強く示唆された。また、触媒粒子をさらに微細にするため、均一なナノスペースを与えるメソポーラスシリカを合成し、複合酸化物のナノ微粒子化を現在進めている。
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