研究概要 |
本研究では,環状オリゴ糖シクロデキストリンを構成するグルコースを選択的に非グルコース糖に変換することによって,シクロデキストリンとは異なった非対称的な空洞を持つ環状オリゴ糖ホストを合成し,包接したゲズト分子の自由回転を束縛し配向を精密に制御し,さらに,その知見を利用して,その環状オリゴ糖ホストに位置選択的に官能基を導入し,高性能人工酵素・レセプターを創製する.このためにゲスト分子の配向を規制できるホスト分子の候補の創製を行った.非グルコースであるアルトロース,2,3-アンヒドロマンノース,2、3-アンヒドロアロース,2,3-ジデオキシ-2,3-ジデヒドログルコース,マンノース,2',3-アンヒドロマルトースによって,シクロデキストリンの構成単位グルコース1個を置き換え,剛直あるいは柔軟,かつ非対称的に変形した空洞を持つ環状オリゴ糖を合成した.こうして合成した非対称空洞を持つ環状オリゴ糖が,水溶液中で包接したゲスト分子(naphthalenesulfonate、nitrobenzenesulfonate)の自由回転を束縛し,空洞内において一定の配向を強制できるかを500MHz NMRの解析によって検討した結果、アルトロースによってβ-シクロデキストリンの構成単位グルコース1個を置き換えた環状オリゴ糖(mono-altro-β-cyclodextrin)が配向を規制できることを発見した。この環状オリゴ糖を構成する1個のアルトロース、6個のグルコースの水素は、その空洞に補足したゲストの芳香族部分の磁気異方性に基づく遮蔽あるいは反遮蔽効果を受けており、その結果に基づいて空洞内で芳香族部分が回転を束縛されていると結論した。これを次年度では化学反応として実証する。
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