研究概要 |
本研究では,シクロデキストリンから,それとは異なった非対称的な空洞を持つ環状オリゴ糖ホストを合成し,包接したゲスト分子の自由回転を束縛し配向を精密に制御し,さらに,その知見を利用して,その環状オリゴ糖ホストに位置選択的に官能基を導入し,高性能人工酵素・レセプターを創製する.前年度の研究ではゲスト分子の配向規制機能を持つホスト分子としてmono-altro-β-cyclodextrin(MACD:β-シクロデキストリンの構成単位グルコース1個をアルトロースで置換した環状オリゴ糖)を発見した。今年度では,その特徴を生かして,水中で塩化ナフタレンスルホニルを作用させ,27個のOHが反応する可能性があるにもかかわらず2^A-OH(主)と2^G-OH(副)のみを選択的にスルホニル化することに成功した。この結果は,反応が包接錯体を経由し,しかもゲストである塩化ナフタレン-2-スルホニルの配向が規制されていることを意味している。さらにそれらを2,3-エポキシドに導き,ベンジルメルカプタンによる開環反応,還元を経て,MACDの2^A-OH,3^G-OHおよびA,B-dialtro-β-cyclodextrin(A,B-DACD)の3^G-OHがそれぞれSH基に置換されたホスト分子を得た。また別法によってもMACDの3^A-SHを合成した。これらのSHは異常に低いpKaをしめし,中性付近で十分解離することから中性条件下で働く人工的なエステル加水分解触媒となりうると予想されるが現在研究中である。またDACDの位置異性体AB, AC, AD体をすべて合成し,包接によってゲスト分子の自由回転を疎外できるかを500MHzNMRによって検討した結果,十分に配向規制ができるとの知見を得た。
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