研究概要 |
脱粒性は、植物の基本特性の一つであり、野生植物においては種子散布のメカニズムとして重要であるが、栽培作物では収量の損失に結びつくため望ましくない。近年,水田転作作物としてダイズやソバの作付けが拡大しているが,水稲やコムギなどに比べ収穫時の収量損失が多いというわれる.そこで本研究では,脱粒による収量損失を農家圃場での調査を通して実態を把握するとともに,その発生メカニズムを品種間差や栽培条件の違い,また収穫時損失が発生しやすい条件などの面から調査を行った. ダイズならびにソバでは,年次変動や地域間差はあったが,著しく収量を損失する場合があった.他作物との収穫時の競合でダイズの収量が2〜3割程度損失したり,台風の被害によりソバの収量の5割以上を損失したりする場合があった.ソバの場合,耕起による除草を適切に行えば脱粒によって落下した種子を次の作付けに利用できる可能性が示された.また,ソバの脱粒は,小枝が細いことに由来し,この形質は種子の大きさと高い遺伝相関が見られた.これは,大粒品種が脱粒し難いことを示す.脱粒を避けるため収穫次期を変えた場合には,ソバの品質が大きく変動することが示された.ダイズについては,裂莢と強く結びつく形質を見出すことはできなかったが,生産者からの聞き取りによってダイズの生育ムラが収穫時期の判定を難しくする場合のあることがわかった.生育ムラは土壌環境の差異や圃場脇の街灯の影響などによって生じていた.空撮画像を用い,圃場内の生育ムラの二次元解析を行ったところ,ムラはランダムに発生し徐々に収束していった.また街灯の光質について検討したところ,青緑蛍光灯や水銀灯がダイズの生育遅延に対して影響が小さかった.
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