研究分担者 |
小川 智久 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (80240901)
永沼 孝子 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助手 (50250733)
実吉 峯郎 帝京科学大学, 理工学部, 教授 (20002339)
横山 博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70261956)
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研究概要 |
前年度に引き続き,魚類未受精卵に存在するラムノース結合特異性レクチン(RBL)の分布を調べた。ニシン目サケ科イワナには,アメマスと同様に2種類のイソレクチンのみの存在が確認され,3種類存在するスチールヘッドマスやシロサケとは異なる分子進化がみられた。また,キュウリウオ目アユ科アユの未受精卵からは1種類のラムノース結合特異性レクチン(SFL)を単離し,287アミノ酸残基からなる1次構造と糖鎖認識ドメイン(CRD)の3回繰り返し構造を明らかにした。SFLはサケ科,キュウリウオ科,ナマズ科のRBLに対して,それぞれ31〜45%,69%,40%の相同性を示し,RBLとCRDの進化系統樹における位置づけが可能となった。アユ及びシロサケ由来のRBLを用いて魚病原虫グルゲア胞子との相互作用を調べた。RBLの添加により胞子は凝集し,ラムノースは凝集を阻害した。蛍光標識RBLは胞子表面全体に結合し,ラフト構造等の局在はみられなかった。胞子表層の糖タンパク質と糖脂質の両方にRBLは高い親和性をもつことが,結合試験及びレクチンブロットによって分かった。グルゲア胞子をSFLで処理した後,飼育水槽のアユ仔稚魚に約1時間感染させ,剖検と組織観察により寄生の状態を検査したところ,SFLには寄生阻害作用はなかった。一方,RBLは,ニジマス生殖腺由来繊維芽細胞(RTG-2)に結合したが,細胞の増殖には影響を与えなかった。RTG-2細胞にRBLを加え,24時間後のインターロイキン(IL)-8とIL-1βの遺伝子発現量をリアルタイムPCRで分析し,IL-8遺伝子に対する発現誘導作用があることを明らかにした。以上,魚類に広く分布するRBLは,1次構造とイソレクチンの存在,組織分布に個々の特徴をもち,細菌や原虫と特異的に相互作用するだけでなく,生体内でサイトカインの産生を刺激して生体防御機能を担っていると考えられる。
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