研究分担者 |
小川 智久 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (80240901)
永沼 孝子 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助手 (50250733)
実吉 峯郎 帝京科学大学, 理工学部, 教授 (20002339)
横山 博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70261956)
|
研究概要 |
系統進化や生息環境が異なる,シロサケ,サワラ,アユの3魚種の未受精卵からラムノースに結合特異性を示すレクチン(CSL1〜3,SML, SFL)を単離し,糖鎖結合特異性,サブユニット構造,1次構造,微生物との相互作用を解析した。195〜286アミノ酸残基からなるCSL1〜3がスチールヘッドマスのSTL1〜3に対応し,94〜97%の相同率を示した一方,SMLやSFLには30〜55%の相同性しかみられなかった。SMLは唯一糖タンパク質であり,Asn168に結合したN型糖鎖の構造を決定すると共に,各ドメインに存在する8個の半シスチン残基のジスルフィド結合部位をこのレクチンファミリー(RBL)では初めて同定した。これらの1次構造情報を基にRBLの進化系統樹を作成し,糖鎖認識部位(CRD)の分子進化を解析した。RBLはグラム陰性菌の大腸菌及びグラム陽性菌の枯草菌に結合して凝集を引き起こし,その結合はリポ多糖によって阻害を受けた。RBLと魚病原虫(Glugea plecoglossi)胞子との相互作用を,結合試験と蛍光標識レクチンを用いた共焦点レーザー顕微鏡観察で明らかにした。RBLは胞子表面の糖タンパク質及び糖脂質を介して強く結合し,この結合性はRBLのCRDだけではなく,その固有構造要素に起因することを示した。胞子をSFLで処理してもアユへの感染率には変化がみられなかった。一方,ニジマス免疫細胞由来RTG2細胞にRBLを添加すると,インターロイキン(IL)-8遺伝子が発現したが,IL-1βの発現は変化しなかった。以上の結果から,RBLはサイトカインを介して生体防御機構を担っていると考えられる。
|