研究課題/領域番号 |
14360121
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 宏喜 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80086727)
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研究分担者 |
岡田 茂 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (00224014)
渡部 終五 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40111489)
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キーワード | 遊離D-アミノ酸 / D-アラニン / アラニンラセマーゼ / D-アミノ酸オキシダーゼ / D-アスパラギン酸オキシダーゼ / 細胞内等浸透調節 / 無脊椎動物 / 魚類 |
研究概要 |
コイ肝膵臓からクローニングしたD-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)のcDNAの全翻訳領域をベクターに組み込み、大腸菌で発現を試み、可溶性の組換え体DAOを高い活性で得た。精製された組換え体DAOはVmax、Kmおよびkcat/Km値から見て、D-アラニンに対して最もよく作用することを確認し、またその他の詳細な酵素学的性質を明らかにした。 コイDAOの3次元分子構造モデルをSWISS-MODELを用いて構築し、ブタ腎臓および酵母R.gracilisのDAOの結晶構造解析データとの比較を行った。これらの3次元分子構造モデルはよく一致していたが、活性部位ループはブタDAOと比べて短かった。このループにはTyr224が存在し、比較的広い基質特異性と基質のα-アミノ基との相互作用を担うものであることが推定された。また、コイDAOではブタ腎臓DAOと同様に'head to head'二量体構造を取ることを明らかにした。 コイにD-Alaを含む餌を投与し、諸組織中のDAO活性およびDAOのmRNAの発現を調べ、コイDAOが餌中のD-Alaに誘導されることを明らかにした。コイの肝膵臓では投与1日目からDAOのmRNAの発現が認められ、投与期間中上昇傾向を示した。これに伴ってDAO活性も上昇した。一方、コイにおけるmRNAの発現は腸管で最も強く、次いで肝膵臓および腎臓の順で、筋肉や脳では全く発現が認められなかった。以上のことから、コイにおけるDAOは単なる解毒酵素ではなく、D-アミノ酸の炭素骨格を回収するための重要な酵素であると考えられる。 これまで報告された水生無脊椎動物中最も高いD-アラニン含量を示し、全アラニンの80%がD-アラニンであるミルクイ中腸腺からアラニンラセマーゼ(ARase)を抽出し、その諸性質を調べた。km値は甲殻類と比べて著しく低く、ヤマトシジミのそれと同程度であった。
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