研究概要 |
甲殻類および数種二枚貝組織に多量に存在するD-アラニン(Ala)の生理機能を解明するため、アラニンラセマーゼの(ARase)一次構造解析を行った。クルマエビ筋肉および肝膵臓から421残基のアミノ酸コード領域を含む1,798bpの塩基配列を決定し、細菌と酵母以外では初めてARaseの一次構造を明らかにした。 コイ肝膵臓からD-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)のcDNAクローニングを行い、347残基のアミノ酸をコードする1,041bpのORFを含む1,294bpのクローンを得た。このcDNAの全翻訳領域をベクターに組み込み、大腸菌で発現を試み、可溶性の組換え体DAOを高い活性で得た。精製された組換え体DAOはVmax、Kmおよびkcat/Km値から見て、D-Alaに対して最もよく作用することを確認し、またその他の詳細な酵素学的性質を明らかにした。 コイにD-Alaを含む餌を投与し、諸組織中のDAO活性およびDAOのmRNAの発現を調べ、コイDAOが餌中のD-Alaに誘導されることを明らかにした。コイの肝膵臓では投与1日目からDAOのmRNAの発現が認められ、投与期間中上昇傾向を示した。これに伴ってDAO活性も上昇した。一方、コイにおけるmRNAの発現は腸管で最も強く、次いで肝膵臓および腎臓の順で、筋肉や脳では全く発現が認められなかった。以上のことから、コイにおけるDAOは単なる解毒酵素ではなく、D-アミノ酸の炭素骨格を回収するための重要な酵素であると考えられた。
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