研究課題
基盤研究(B)
本研究では新規脳保護薬として開発きれだカルモデュリン阻害剤、DY-9760eの虚血に伴う脳浮腫の抑制効果とそのメカニズムと脳保護薬として開発中の新規バナジル誘導体の治療有効時間域を明らかにすることを目的とする。虚血、頭部外傷、種々の神経変性疾患に伴う神経細胞死には過剰の細胞内カルシウムの上昇、それに伴う一酸化窒素(NO)の産生とカルシウム依存性プロテアーゼ(カルパイン)の活性化反応が関わっている。DY-9760eは虚血に伴うNO産生とカルパイン/カスパーゼの活性化反応を抑制して神経細胞を保護した。さらに、DY-9760eは虚血に伴う血液脳関門の破綻と脳浮腫を抑制した。脳浮腫は再灌流に伴う血管内皮障害の結果もたらされ、脳虚血亜急性期に見られる最も重篤な症状である。しかし、脳浮腫に有効な薬剤はない。DY-9760eの血管内皮細胞保護作用と脳浮腫抑制作用に焦点を絞って、抗脳浮腫薬として臨床開発へと進める。一方、バナジウムとその誘導体は非選択的なチロシンホスファターゼ阻害剤である。オルトバナジウム酸はインスリン様成長因子(IGF-1)と同様に脳においてPI3キナーゼ/AktとMAPキナーゼを活性化した。その結果、バナジウム酸とIGF-1は砂ネズミの一過性脳虚血とラット中大脳動脈閉塞モデルにおいて強力な脳保護作用を示した。Aktによる脳保護作用には細胞死を誘導するフォークヘッド転写因子(FOXO)、Badおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)の抑制作用が関わっていた。虚血性の細胞障害は脳以外に心臓、腎臓などの組織においても見られる。オルトバナジウム酸の心筋保護効果は虚血再灌流による心筋細胞障害に対しても認められた。この心筋保護作用にもAktの活性化反応が関与していた。
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