研究概要 |
HCVは、肝硬変のみならず肝がん発症の原因となることが知られている。HCV複製の阻止によりHCV関連肝がんの発症の遅延或いは予防が期待できる。RNA依存RNA合成酵素(RdRP)であるNS5BはHCV複製酵素の遮断を目的にした薬剤開発の有力准標的である。我々は、NS5BのRdRP活性に必須な5アミノ酸残基を新たに特定し、RdRP活性にオリゴマー化が必須であると報告した(Qin et al.,Hepatol.,2001,J. Biol. Chem.,2002)。NS5Aは、複製の制御蛋白と推定されているが、その作用機序は不明である。今回我々は、1)NS5BとNS5Aの特異的な相互作用をin vitro及びin vivoで見い出した。各種欠損及び内部欠損型NS5Aを用いた解析で、aa105-162及びaa277-334の2領域が独立してNS5B結合に必須であり、NS5Bの集約型アラニン置換変異ライブラリーを用いたスキャンにより、4種類の配列がNS5A結合に必要である結果を得た。2)RdRP活性に対するNS5Aの効果を測定するために、大腸菌型NS5Aの発現と精製を検討し、HisタグNS5A蛋白をaffinity精製することにより、純度の高い全長NS5A及び内部欠損型NS5Aを調整した。3)精製したNS5Btのpoly A依存oligo Uを鋳型とプライマーとしたRdRP合成測定系で、Ns5Aは少量でRdRP浩性を促進し、多量で阻害効果を示した。NS5B結合欠損変異NS5Aで、これらの効果が認められないことから、NS5AとNS5Bの相互作用に依存したRdRP活性の修飾があると結論された(Shirota, et al, J. Biol. Chem.,2002)。今回の結果から、NS5AがNS5Bと直接結合することによって、HCVの複製の制御に関わる可能性が示唆された。
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