肥満に直結する脂肪細胞分化の重要な制御因子として、PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ)やC/EBP(CCAAT/Enhancer-Binding Protein)ファミリーが同定された。しかし、これらが発現するのは、脂肪細胞分化の中期であり、脂肪細胞分化の最も初期における変化は未だ不明な点が多い。本研究では、脂肪細胞の分化の特に初期に的を絞り、その分子機構を明らかにすることを目的とした。すでに脂肪細胞分化初期に発現が増加する因子として、Rhoファミリーの一つであるTCLを同定した。そこで脂肪細胞分化初期におけるTCLの機能解明とともに、さらに新たな因子の同定もめざした。 1)TCLの発現により発現量が増加する因子をPCRサブトラクション法を用いて単離した。それらの脂肪細胞分化過程初期における発現量変化について検討したところ、TCLと同様に分化初期に発現量が一過性に増加するものや、経時的に発現が増加していくもの、減少していくものなど様々な発現パターンが得られた。 2)活性型、不活性型および野生型TCLを発現する3T3-L1細胞のstable transformantsを樹立した。樹立した細胞を用いてCRIB assay(Cdc42/Rac interacting binding assay)を行なった結果、活性型および野生型TCLがCdc42やRac1と同様にPAK1由来のCRIB domainに結合することを明らかとした。 3)上記のstable transformantsについて誘導誘導実験を行ったところ、不活性型TCL発現細胞の分化能が抑制されることが明らかとなった。 4)Pull Down Assayおよび免疫沈降法によりTCLと相互作用する因子の存在を明らかにした。 5)データベースに登録のない未知遺伝子群を多数同定した。その中で特に脂肪細胞分化に関与していると思われる遺伝子をfad(factor for adipocyte differentiation)と名付け、fad24およびfad158についてさらに解析した。 6)fad24は、脂肪細胞分化を正に制御する新規遺伝子であることを明らかにした。また核内に局在することも見い出した。 7)fad158も脂肪細胞分化を正に制御する新規遺伝子であることを明らかにした。
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