研究概要 |
生活習慣病の克服には、脂肪細胞肥大化の研究と並び、脂肪細胞分化機構の解明も重要な課題である。肥満に直結する脂肪細胞分化の重要な制御因子として、PPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptorγ)やC/EBP (CCAAT/Enhancer-Binding Protein)ファミリーが同定された。しかし、これらが発現するのは、脂肪細胞分化の中期であり、脂肪細胞分化の最も初期における変化は未だ不明な点が多い。我々は、すでに脂肪細胞分化の最も初期において発現が変動する遺伝子群を多数単離した。特に、データベースに登録のない未知遺伝子群をfad (factor for adipocyte differentiation)と名付け機能解析を行い、以下の結果を得た。 1)fad158の全長cDNAを単離した結果、新規遺伝子であることが明らかとなった。fad158は、脂肪分化の初期に一過性に発現が上昇するという特徴的な発現パターンを示した。さらに、アンチセンスおよびセンスfad158の検討により、fad158が脂肪細胞分化を正に制御することを明らかにした。 2)fad104の発現も脂肪細胞分化初期に特異的であった。RNAi法を用いてfad104の発現をノックダウンしたところ、脂肪細胞分化は抑制された。 3)fad24は、核スペックルに局在することが明らかとなり、転写やスプライシングに関与している可能性が示唆された。脂肪細胞分化に関しては、RNAiならびにセンスfad24強制発現細胞の実験より、fad24が脂肪細胞分化を正に制御していることを明らかにした。 4)fad123は、新しい亜鉛トランスポーターであることを、放射標識した塩化亜鉛を用いて明らかにした。 以上のように、新規遺伝子として、fad24,fad104,fad158,fad123の4つの遺伝子の機能解析を行い、いずれも脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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