研究概要 |
1)^<14>C年代が3〜5万年前を示す南極の隆起海浜に産する貝化石の准かに、より古いものが含まれている可能性が高いことから、クロスチェックの意味も含めて、昨年度はESR年代測定法による測定をおこなった。対象にした試料はすべてAMS^<14>C年代値をすでに得た貝化石Laternula ellipticaである。3〜5万年の^<14>C年代を示した貝化石のESR年代は、43-57ka,59-76ka,73-93ka,162-190ka,154-207ka,203-253kaで、すべてAMS^<14>C年代よりも古い値であった。また、^<14>C年代が3.5kaの完新世試料のESR年代は1.5-1.7kaと測定され、^<14>C年代のリザーバー効果を考えると、整合性のある結果であった。今年度はさらに、同一試料のアミノ酸ラセミ化年代を測定し、三者の年代値を比較した。アミノ酸のラセミ化速度は温度に依存するが、貝化石が経てきた温度環境が不明であるので、昭和基地の現在の年平均気温-10℃を用いた。アミノ酸ラセミ化年代は完新世の貝化石を除くと、すべて21万年-41万年前の値を示し、三者の中でもっとも古い年代となった。過去の温度環境の検討を含めて、さらに研究を進める必要がある。 2)南極沿岸露岩から採取した岩石試料の宇宙線照射年代(露出年代)を測定した結果、東南極の昭和基地付近では、LGMに先立つ5万年前頃から氷床の後退が始まっていたことを示す露出年代が得られた。 3)南極沿岸から採取した第三紀の可能性がある海棲貝化石Zygochlamys andersoniの^<87>Sr/^<86>Sr年代を測定し、約100万年前の年代値を得た。南極の他地域に産する同種貝化石の年代からの類推で、第三紀鮮新世の化石であることが予想されていたこともあり、さらに検討を要する。 4)南極周辺海域で採取された海底堆積物コアの粒度分析等のコア解析を実施した。
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