氷・氷摩擦と高密度雪圧縮特性の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14390002
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 前野 紀一 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50001657)
• 研究分担者: 荒川 政彦 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (10222738) ; 西村 浩一 防災科学技術研究所, 長岡雪氷防災研究所, 主任研究員 (10180639) ; 水野 悠紀子 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (10002461) ; 竹井 巌 北陸大学, 薬学部, 講師 (70247477)
• キーワード: 氷 / 雪 / 摩擦 / 衝突 / 付着 / 圧縮 / 雪崩 / 氷衛星

研究概要

低速度における氷・氷摩擦係数の理論の修正が完成し、低速度領域(10^<-7>〜10^<-3>m/s)における摩擦実験結果に対する検証が行われた。モデルは、低速度あるいは融点近辺の高温度になると焼結の効果によって氷摩擦面の結合面積が増え、それによってせん断摩擦力が増加するというものである。これまで詳細が明らかでなかった高密度雪の摩擦機構を調べるため、最密充填した氷粒子群の中を円柱が定速度で移動する時の抵抗が種々の条件のもとで測定された。得られた結果は予想に反するものであり、ガラスや金属粒子の結果とは大きく異なった。例えば、抵抗は速度の減少とともに増加し、挿入深さの2乗に比例して増加した。これらの結果は、昨年度測定された氷平面同士の低速度摩擦実験の結果、および新しく構築された低速度氷摩擦に対する凝着せん断理論で説明された。雪の音波速度と減衰の測定は引き続き行われ、誘電物性測定で発見された融点近傍における特異現象が再確認された。また、音波測定による弾性率とポアッソン比の温度依存性が求められた。雪と岩石混合物に対する高速衝突の実験が広い速度領域(150-670m/s)で実施され、衝突破壊強度と速度、空隙率、岩石混合率の関係が求められた。この結果により、惑星形成時の氷微惑星衝突の際、衝突によってクレーターができるか、氷微惑星が完全に破壊するか、あるいは破壊後重力によって再集積するか、を予測することが可能となった。

研究成果

• [文献書誌] Maeno, N.: "Ice-ice friction measurements, and water lubrication and adhesion-shear mechanisms"Can.J.Phys.. 81(1/2). 241-249 (2003)
• [文献書誌] Maeno, N.: "Adhesion shear theory of ice friction at low sliding velocities, Combined with ice sintering"J.Applied Physics. 95(1). 134-139 (2004)
• [文献書誌] 根本征樹: "吹雪の物理モデルの現状と課題"雪氷. 65(3). 249-260 (2003)
• [文献書誌] Takei, I.: "Dielectric and mechanical alterations of snow properties near the Melting temperature"Can.J.Phys.. 81(1/2). 233-239 (2003)
• [文献書誌] 竹井 巖: "雪試料の誘電的性質における経時変化と温度特性"雪氷. 65(6). 511-522 (2004)
• [文献書誌] Arakawa, M.: "Impact strength of porous ice -silicate mixture"Proc.36th ISAS Lunar and Planet.Symp.. 57-60 (2003)
• [文献書誌] Arakawa, M.: "Observation of crack propagation in water ice with fluid inclusion"Can.J.Phys.. 81(1/2). 159-166 (2003)
• [文献書誌] Arakawa, M.: "Effect of direct and alternating fields on friction between ice and metals"Can.J.Phys.. 81(1/2). 209-216 (2003)