3年の研究期間の初年度のあたる本年度は、まず、中国側の海外協力研究員である清華大学の蒋展鵬教授・管運涛博士・師紹博士の3人を日本に招聘し、中国の下水処理システムの現状と問題点に関して整理をおこなった。また、味埜が北京を訪問し、2カ所の下水処理場を訪問し、聞き取り調査をおこなった。現在使われている下水処理の方法およびその技術構成の現状、汚泥処理の方法および技術構成の現状を中心に情報を収集した。その結果として、北京市における下水道においては、管渠整備はかなり進んでいるのでこのまま終末処理場を建設してゆくと日本の大都市と同様に合流式下水道システムができあがってしまい雨天時の排水水質に問題が生じる可能性があること、富栄養化の直接の脅威はそれほど深刻とは思えないのにリン・窒素除去の導入はすでに試験的に始まっていること、汚泥処理・処分は現状では大部分が土壌還元でありその潜在的危険性についてほとんど評価がなされていないこと、処理水再利用に対する要求が非常に高く限外濾過などの高度の処理システムが導入されているがそのエネルギー消費についての評価に疑問が残ること、などが明らかになった。また、日本で活性汚泥法の維持管理上で重要な問題である糸状性バルキングの発生についての知見を収集しようとしたが、これに関わる具体的なデータが無く、来年以降、本研究の枠内において自分たちでデータを収集する必要性が示唆された。来年度以降、下水処理過程から発生する汚泥の処理処分の環境影響評価、合流式下水道の問題点の評価、および、処理水再利用の技術的課題の発掘と評価に焦点を絞り、定量的な解析ができるようなデータ収集を進めてゆく予定である。
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