研究概要 |
ドミニカ共和国,サントドミンゴ市におけるデングウイルス(DEN)感染症の浸淫状況を調査すべく,2002年6月,同市在住献血者より得られた血清約1000検体について,DEN特異IgG抗体保有率調査を行った.このうち約98%がDEN特異IgG抗体陽性と判定された.今回の調査で,サントドミンゴ市民は従来推定されていた以上にDEN特異IgG抗体,またはDEN virion抗原に対する交差IgG抗体の保有率が高いことがわかった.このことよりサントドミンゴ市においてはDEN感染症の浸淫が従来の推定よりも高い可能性が示唆された. 我々は狂犬病ウイルス(RV)に対して高い中和活性を持つヒト検体を用いて,pComb3Xベクターを使用したヒトFabライブラリーを作製した.精製したRVビリオンをパニング用抗原に用いてRV特異Fab発現クローンを濃縮し,同抗原を用いて選別した結果,RVタンパク特異Fab発現クローンを数十種分離した.現在中和試験を施行中である.このRVを用いた研究は,本研究課題と同一の戦略を用いたものであり,パイロットスタディー的な性格を持つものである.このノウハウを今後の本研究課題に十分生かせるものと思われる. ヒトFabライブラリー作製用ボランティア検体の採取地を,諸般の事情によりドミニカ共和国からフィリピン共和国に変更した.同国はドミニカ共和国同様,高度のデング感染症信淫地区であり,かつ研究分担者が常駐するサンラザロ病院は世界的な感染症専門施設をもち,デング感染症来院者数も多い.サンラザロ病院は当研究機関との間に学術協定が存在し,すでに同施設倫理委員会の審査の最中であり,近日中に検体採取が可能となる.上記RV特異Fab分離の業績より,検体入手後迅速なライブラリー構築,抗デングウイルス特異Fab発現クローンの選別が可能であると思われる.
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