研究概要 |
昨年度施行したドミニカ共和国におけるデングウイルス(DEN)浸淫状況調査において,ドミニカ共和国においては成人の98%がデング特異IgG抗体を保有していることがわかった.また,DENの4つの血清型全てがかつて同国首都であるサントドミンゴ地区で流行した可能性が,血清疫学のデータより示唆された.同時に施行した小児検体を用いた調査では,サントドミンゴ地区において,7-9歳までにほとんど全ての住民が一度はデングに感染することが示唆された. 一方我々は米国NIHとの共同研究を進め,DENに感染したチンパンジー検体を用いてヒト型Fab抗体ライブラリーを作製し,DEN4型に対して効率的に中和活性を示すFabクローンを作成した.作成したFabクローン5H2は0.24μg/mLの濃度でDEN4型に対して50%focus reductionを示した.また同FabをヒトIgG1産生ベクターに組み込み,CHO細胞でヒトIgG1を産生させた.同IgG1はFabに比べて,DEN4型に対して10倍程度高い効率で中和活性を示した.Fab5H2は主としてDEN Eタンパクに特異的に結合した.また,ヒトの同型遺伝子に高い相同性を示した. 我々はフィリピン,サンラザロ病院との共同研究で,デング病棟より回復退院しかつ入院時にデング特異IgMが陽性であったボランティア8人より末梢血リンパ球の提供を受け,pComb3Hベクターを用いてヒトFabライブラリーを作成した.ライブラリーサイズは約2x10^8transformation unitであり,抗DEN中和抗体産生クローンを多く含むと推測された.このヒトFabライブラリーを用いて各血清型DENビリオン,リコンビナントDEN NS1タンパクを抗原として用い,パニング(生物学的濃縮)を施行し,各抗原に特異的なFabを数種得た.現在Fabを精製・濃縮し生物学的検索を行っている.
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