研究概要 |
本研究は、現代における身体文化のありかたを「脱身体化」というキーワードで捉え,それが哲学的な身体文化批判とどのような関係にあるかを明らかにすることを目的とする。この研究は、平成14年から平成16年にかけて三年間にわたる期間において行われることとなっている。平成14年度は本研究の初年度にあたる。そのため、まずは資料的な基盤を形成し、基本的なテキストの分析を行うことで、全体の研究について概要をつかむことに力を集中した。その研究実績は、以下のとおりである。 1 現代身体文化論の資料的基盤 現代社会批判と現代身体文化論に関する思想的文献について、ドイツ現代社会論とアメリカ・ジェンダー論関係についてのデータを収集し、これを整理した。なお、その際に、現在哲学議論においてアクチュアルな問題として「人間の身体と動物論との関係」が浮上してきた。それについては、ハイデガーの『形而上学の根本概念』における動物論を綿密に分析した。また、これに関係する思想としてエリアスやスローダイクなどの動物論を考察し、身体文化論的な視点からそれらの位置づけを行った。 2 現代の身体文化を批判的かつ歴史的に捉えた重要な理論として、バーバラ・ドゥーデンの身体史研究が挙げられる。これについては、ドゥーデンのもっとも基本的なテキストである1997年の「ゲヌスと新しい民俗学の対象」を翻訳・雑誌公刊した。そのことで、身体史の方法論的な基盤がなんであるか、また現代社会における「身体」の問題を考察するための批判的視点がどこに求められるかが明確になった。また、バトラーの身体論とコーネルの家族論については、さまざまな資料の分析を行った。
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