本研究は、現代社会のありかたを身体論の側面から考察し、身体論的な自己論の可能性を探求する。主として以下のふたつの分野について考察を行い、それぞれについて文献研究およびその評価を行なった。 1)現代ドイツにおける「脱身体化社会」批判論の系譜 バーバラ・ドゥーデンの「身体史」の哲学的評価;身体の歴史と脱身体化現象批判の関係について、ドゥーデンの歴史研究をもとに、その現代的意義を明確にする。 2)近現代の日本思想における「身体」の位置づけにういての批判的研究 主として、和辻哲郎の倫理学における「身体」の位置づけと、日本近代の倫理思想におけるジェンダー問題について考察を行なった。 具体的な成果 1)については、ドゥーデンの「脱身体化」批判論の翻訳・紹介とともにその現代的意義を明らかにする論文を執筆。 2)については、ドイツ・ジーゲン大学・社会・精神科学研究所におけるドイツ語による講演Asiatische Werte und die Ethik des Zwischenおよびドイツ語の論文執筆を行い、和辻哲郎の「倫理学」がどのような意味で現代倫理学にとっての貢献であるかを明らかにした。また、韓国梨花大学のキムヘイソク教授主催の「近代と家族」プロジェクトについて、共同研究のための準備作業を行なった。
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