研究概要 |
本研究の目的は,線画を用いて同じ妨害項目の中から一つの異なるターゲットを検出する視覚的探索課題において,妨害項目とターゲットの意味的・視覚的類似性の高・低がターゲット検出に及ぼす効果を明らかにすることであった。視覚的類似性はターゲットと妨害項目間の全体的な形の類似性,意味的類似性はカテゴリーによる意味的近さの高・低の主観的評価により操作した。 本年度の目的は,主にこれまでの実験結果を総合的に考察することであった。実験結果は以下のとおりである。実験1・2は,ターゲットの先行提示がない(実験1),あり(実験2)条件で,単語探索課題との検出時間の比較を行った.その結果,線画課題では,意味的・視覚的類似性共に低い条件が高い条件より速く対象を検出した。一方,単語課題では,意味的類似性の低い条件が高い条件より速く対象を検出するが,視覚的類似性については差がなかった。実験3は,先行手がかりの効果が概念的なものか視覚的なものかを確認するため,線画探索刺激とは異なる単語を,ターゲットの先行手がかりとして提示する条件を設けた。その結果,先行手がかりの種類によってターゲットの検出時間に差はなく,共に,意味的類似性・視覚的類似性の効果がみられた。次に,実験4として探索刺激を8から4に減じて,刺激数の検討を行った。同時に先行手がかりを線画または単語として,実験3との比較を行った。その結果,意味的類似性,視覚的類似性の各主効果,及び手がかりの種類と意味的類似性の交互作用が認められた。 これらから,1.線画の視覚的探索課題における対象検出には,周囲刺激の形の類似性,意味的近さが妨害的に影響する。2.探索刺激数が少なくなると対象検出が速く,相対的に妨害効果は小さくなる。3.先行提示の手がかりめ効果は概念的なものである。4.先行提示手がかりの概念的効果として,視覚的・意味的表象を想定できる。という考察を行った。
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