研究概要 |
今年度は,前年度に進めた「公平」についてのフォーマリゼーションの作業を進め,規範的判断の底に横たわる「公平」にはふたつの層が区別されることを明らかにするとともに,本研究の関心の背景をなす「普遍主義化」のプロセスが公平を中心とした規範的判断にどのような意味を持つかを考察を行った. 具体的には,第一に,「公平」を同一条件同一処遇の形式的要請ととらえたとき,配分を左右する「条件」は同値類(定義上,同値類は互いに素な部分集合である)としてとらえられること,「公平なルール」の第一の要請は,それが形式的には「条件」と「結果」との写像であることを明らかにした. 第二に,上のように定式化されたルールが作動する局面を考えることにより,「公平」という規範的要請にはより基底的な写像関係,すなわち,「ルールの適用範囲とそれ以外」を分けるもうひとつのレベルのあることを明らかにした,以上より,「公平」が人々を条件集合に区分し,それぞれに配分を割り当てる,可視的な写像のレベルと,そのような配分の考慮への包摂と排除を定める不可視な写像のレベルのふたつよりなり立つことが示された(現実社会に照らしてみるとき,異質性の増大はこのふたつの写像の間の相互浸透を促すものとしてとらえられる). そして第三に,「不公平」とみなされるものの形式的な性質から,普遍主義化やルールの普遍主義性が現実社会に対して持つインプリケーションの導出をおこなった.
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