我々がこの1年間に発表した結果は、あるタイプの連立不定方程式の整数解の個数の決定に関する結果である。2つの2次の連立不定方程式の整数解を決定する問題は、自然に2つの2次のrecurrence sequence中の共通項の決定問題と密接に結びついている。我々は、以前からいくつかのタイプの2次の連立不定方程式について、この不定方程式の問題とある実2次体、4次体の単数群の構造との関連を明らかにしてきた。さらにABC予想との結びつきについても以前から注目してきた。今回は、我々の初等的、代数的な手法で、いくつかの連立不定方程式の整数解の数について、今までM.A. BennettおよびG. Walshによって得られてきたいくつかの結果が一般化できることを示した。特にABC予想の仮定のもとでは、あるタイプの実2次体の基本単数の明示式が得られること(RDタイプとは異なる新しい基本単数の明本式をもつ実2次体の無限系列が構成されること)、連立不定方程式の整数解の個数が高々1となることを示し、また解があるための必要十分条件も示すことができた。これは、ABC予想を仮定して初めて得られた結果であり、Benettの「一般に解の個数は3以下」という現在得られているベストな評価よりもこの系列に関しては、よりシャープに「整数解の個数は0か1だろうという新しい予想」が得られたことになる。結果は、「On simultaneous diophantine equations」という題目で、Acta Arithmeticaに掲載されることが決まっている。現在は、ノルム形式の2次の連立不定方程式について、上記の結果の一般化を試みている。
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