研究概要 |
コンパクトな複素多様体が定リッチ曲率ケーラー計量を持つための必要条件としてFutaki invariantがある.Futaki invariantがある種のline bundleのholonomyとして表され,結果として,holonomyの存在が定リッチ曲率ケーラー計量の存在に対する障害となることを「K.Tsuboi, On the Einstein-Kahler metric and the holonomy of a line bundle, Proc. Edinburgh Math. Soc.」で示したが,ここで用いられたholonomyはリー環準同型写像であるFutaki invariantのリー群準同型への拡張を与え,同じくリー群準同型である楕円型作用素の同変行列式と深く関係している.また,holonomyの値を求め,Futaki invariantの値を求めるためには群作用の固定点集合の情報が必要となる.さらに,コンパクトな複素多様体が定スカラー曲率ケーラー計量を持つための必要条件としてBando-Calabi-Futaki invariantと呼ばれる積分不変量があるが,この不変量が群作用の固定点情報から求められることも以前に示した.一方,以前に得た結果によって,同変行列式と群作用の固定点集合の情報の間の関係がわかっている.さらに,同変行列式が群準同型であることより,群の生成元と生成元間の関係式から,同変行列式を用いることによって,固定点集合に関する情報が得られる.この楕円型作用素の同変行列式を用いて固定点集合に関する情報を得る方法は,複素多様体の定曲率ケーラー計量の存在判定に有用であるだけではなく,「多様体がある種の群の作用を許すか?」という伝統的な問題に対する新しい判定法を与える.この判定法は,今までは,自己同型群の代数的構造などの個別の考察から得られていた結果に対して,一括的な判定を与える.この結果については近く投稿予定である.
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