研究概要 |
コンパクトな多様体の対称性はその多様体に作用する群の形による.ある多様体上にどのような群が作用し得るのかという問題は長い歴史を持つ問題であり,この問題に対する結果を得るために様々な手法が用いられてきた.例えば,同変楕円型作用素の固有和によって定義されるAtiyah-Singerの指数も手法の1つとして用いられてきたが,限られた特殊な場合にだけ有効な手法であった.一方,同変楕円型作用素の行列式(同変行列式)は群から円周群S^1への群準同型写像となり,円周群が単純なアーベル群であることより,行列式はしばしば0となる.この行列式の値が0となるという結果は群作用の固定点集合に対する制約条件となり,従って,その制約条件が満たされない事を示すことによって群作用そのものがあり得ないという結論を導き出せる.この手法を群作用の中でも特に興味深い有限群作用の場合に用いることによって,以下の結果を得た. (1)特定の種数の写像類群の部分群に関して,同変行列式を用いることにより,従来の方法よりも簡潔で,しかも,一般的な結果を導き出せる新しい方法を開発した. (2)次元が2よりも大きい多様体上の有限群作用に関しても,同変行列式を用いることにより,一般的な結果を導き出せる新しい方法を開発した. これらの結果については,論文K.Tsuboi, Pseudo-free action of cyclic groups, Kokyuroku, RIMS, Kyoto Univ.,vol.1329(2003),p.26-p.35,および,K.Tsuboi, The finite group action and the equivariant determinant of elliptic Operators, to appear in J.Math.Soc.Japanにて発表した.
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